デリーからロンドンまで、
乗合バスで行けるか。
たったひとつの問いから始まった旅の記録が、日本の個人旅行の形を変えました。 沢木耕太郎『深夜特急』を、作品として解説します。 そして半世紀を経たいま、同じ地図の上を進む旅の記録も、ここに残していきます。
『深夜特急』とは
『深夜特急』は、作家・沢木耕太郎による紀行作品です。 インドのデリーからイギリスのロンドンまで、乗合いバスで行けるか という思いつきから始まった、一年以上におよぶユーラシア放浪の記録として書かれています。
実際の旅が行われたのは1974年、著者が26歳のとき。 書籍として世に出たのはそれから10年以上あとで、 第一便『黄金宮殿』と第二便『ペルシャの風』が1986年、 第三便『飛光よ、飛光よ』が1992年に刊行されました。 現在広く読まれている新潮文庫版は、全6巻に再編されたものです。
当サイトは作品の内容の解説と背景情報を扱うファンサイトです。 作品の本文は掲載していません。旅の描写そのものは、 書籍でしか味わえないものだと考えています。 興味を持たれた方は、ぜひ新潮文庫版などでお読みください。
3分でわかる『深夜特急』
全6巻という分量に構える前に、この作品がどういう形をしているかだけ先に押さえておくと、 読み始めてから迷いません。
| ジャンル | 紀行/ノンフィクション。小説ではありません |
|---|---|
| 旅の時期 | 1974年。著者26歳 |
| 出発点 | 日本。ただし物語は香港から動き出す |
| 目的地 | ロンドン |
| 移動手段 | 乗合バスを中心とした陸路 |
| 期間 | 1年以上 |
| 文庫 | 新潮文庫版 全6巻(構成を見る) |
いちばん重要なのは「デリーから」のはずの旅が、香港から始まるという点です。 しかもデリーに着くのは3冊目の終わり。 つまり全6巻の半分は、本題に入る前の寄り道でできています。
普通の旅行記は「どこへ行き、何を見たか」を書きます。 『深夜特急』が書いているのは、なぜ先へ進めないのかです。 街が面白くて動けない、動く理由が見つからない、着いてしまうと終わってしまう。 予定どおりに進まないことそのものが主題になっている—— これが半世紀読み継がれている理由だと考えています (作品解説)。
どこから読むか
- 作品解説 『深夜特急』とは どんな作品なのか。成り立ち、書かれ方、なぜ読み継がれるのか。
- 構成 全6巻の構成 各巻の舞台と巻末対談の相手。1巻ずつの解説ページもここから。
- 地理 作中のルート 香港からロンドンまで、実際に通った土地を順に。
- 街 作中の街の現在 16都市が、いま訪ねられるのか。何が変わり、何が残ったのか。
- 版 新版と旧版の違い どの版を買えばいいか。電子版に入っていない対談がある。
- 年表 旅と本のあいだの52年 本が出たとき、道はもう通れなくなっていた。1本の年表で見る。
- 豆知識 タイトルの由来 なぜ「急行」ではなく「特急」なのか。「便」という数え方の意味。
- 映像化 ドラマ版 大沢たかお主演『劇的紀行 深夜特急』全3部の内容。
- その後 旅人に与えた影響 なぜ「バックパッカーのバイブル」と呼ばれるのか。
- 著者 沢木耕太郎という書き手 ノンフィクションの書き手が、なぜ自分の旅を書いたのか。
- 読後に 次に読む本 読み終えたあとの空白を埋める、系統別の旅の名著。
短い疑問への答えはよくある質問へ。 実話なのか、何巻から読むか、いま同じルートをたどれるのか—— 定番の質問に一問一答で答えています。
50年後の、同じ地図
作中の旅は1974年のものです。 当時バスで抜けられた国のいくつかは、いま同じようには通れません。 通貨も、国境も、旅の道具も変わりました。 それでも、地図の上に引かれた線そのものは残っています。
このサイトでは、作品の解説と並べて、 いま実際に世界を一周する旅の記録も残していきます。 同じ土地が半世紀でどう変わったのか、あるいは変わらなかったのか。 比べられる形で書いていくつもりです。
たどれる区間と、たどれない区間
作中の経路を現在の地図に重ねると、きれいに3種類に分かれます。
| 区間 | 現状 |
|---|---|
| 香港・東南アジア 1巻・2巻 |
ほぼそのままたどれる。マレー半島の陸路南下も健在 |
| インド・ネパール 3巻 |
順路は同じでたどれる。ただし事前のeビザが必須など手続きは別物 |
| パキスタン〜イラン 4巻 |
同じようにはたどれない。中央アジア経由での代替になる |
| トルコ〜ロンドン 5巻・6巻 |
そのままたどれる。ただし物価が当時とは別世界 |
つまり作品の中盤だけが、本を読む以外に体験する方法を失っています。 こちらの旅では、その区間を中央アジア経由で置き換えました。 同じ道ではありませんが、同じ方向へ同じように陸路で抜けます (作中の経路との対応)。
姉妹サイト
世界一周そのものの費用、航空券、ルートの組み方、ビザといった 実務的な情報については、姉妹サイトの 世界一周.comで解説しています。 こちらは作品と旅の記録、あちらは計画のための数字、という役割分担です。