『深夜特急』新版と旧版の違い — どの版を買えばいいか
『深夜特急』には単行本・文庫版・増補新版・電子の合本版があり、 どれを買えばいいのか分かりにくくなっています。 結論から言うと、これから読むなら増補新版です。 ただし電子版には収録されていないものがあるので、そこだけ注意してください。 ※作品の本文は掲載していません。
最終更新:2026年9月2日
先に結論
本編の内容は、どの版でも同じです。 違うのはおまけの部分だけなので、まず読みたいだけならどれを買っても問題ありません。
そのうえで選ぶなら、増補新版(2020年発行の新潮文庫)です。 エッセイが追加されているぶん収録量が多く、しかも巻末対談も全巻そろっています。
版の変遷
まず時系列を押さえると、版の関係がすっきりします。 旅そのものから数えると、半世紀にわたって版を重ねている作品です。
| 年 | できごと |
|---|---|
| 1974年 | 旅そのもの。著者26歳 |
| 連載 | 産経新聞に連載される |
| 1986年5月 | 単行本『第一便 黄金宮殿』『第二便 ペルシャの風』刊行 |
| 1992年 | 単行本『第三便 飛光よ、飛光よ』刊行。ここで完結 |
| 1993年 | JTB紀行文学大賞を受賞 |
| 1994年 | 文庫版 全6巻が刊行される |
| 2020年7〜9月 | 新潮文庫の新版(増補新版)が発行される |
つまり「旧版」と呼ばれているのは1994年の文庫版、 「新版」は2020年の増補新版を指します。 単行本3冊が文庫で6巻に組み替えられた経緯は 全6巻の構成で詳しく扱っています。
増補新版で何が増えたのか
新潮社の案内によれば、増補新版では 「あの旅をめぐるエッセイ」が新たに追加されています。
つまり本編そのものは書き換えられていません。 1974年の旅の記録は同じで、そこに後年の書き手が旅を振り返った文章が足されている、 という構造です。
『深夜特急』はもともと、旅から12年たってようやく書かれた本です (沢木耕太郎という書き手)。 時間を置いてから振り返るという行為が、この作品の成り立ちそのものでした。 そこにさらに数十年後のエッセイが加わるわけですから、 「距離を置いて書く」という同じ方法がもう一段重なっていることになります。
電子の合本版に無いもの
電子書籍の合本版は、2020年発行の新版6巻をまとめたものです。 ただし新潮社の案内に明記されているとおり、 第2巻収録の高倉健氏との対談「死に場所を見つける」は、電子版には収録されていません。
これは見落としやすい点です。 巻末対談はこの作品を読む楽しみのひとつで、 なかでも高倉健との一編は最もよく知られています (巻末対談の一覧)。 対談まで読みたいなら、紙の文庫を選んでください。
4つの版を並べて比べる
| 単行本 | 文庫(1994) | 増補新版(2020) | 電子の合本版 | |
|---|---|---|---|---|
| 冊数 | 3冊 | 6巻 | 6巻 | 1冊にまとまる |
| 区切り | 「便」 | 地域ごと | 地域ごと | 区切りなし |
| 本編 | どれも同じ | |||
| 追加エッセイ | — | — | あり | あり |
| 高倉健との対談 | — | 収録 | 収録 | 未収録 |
| 入手のしやすさ | 古書中心 | 古書中心 | 現行 | 現行 |
| 持ち運び | 重い | 6冊は重い | 6冊は重い | 端末1台 |
表にすると分かるとおり、迷う要素は「対談を取るか、軽さを取るか」の一点だけです。 本編で悩む必要はありません。
目的別のおすすめ
| あなたの目的 | 選ぶべき版 | 理由 |
|---|---|---|
| はじめて読む | 増補新版の紙 | 現行で手に入り、エッセイも対談も全部そろう |
| 旅に持っていく | 電子の合本版 | 紙6冊は長旅では重すぎる(持ち物リスト)。対談1本はあきらめる |
| 対談が目当て | 紙の文庫 | 電子には高倉健との対談が入っていない |
| すでに旧版を持っている | 買い直す必要はない | 本編は同じ。追加エッセイのためだけに6巻買い直す価値があるかは好み |
| 1巻だけ試したい | 第1巻 | ここで合わなければ以降も合わない(第1巻の解説) |
見分け方
書店や通販で版を見分けるときは、次を見てください。
- 表紙・書名に「【増補新版】」の表記があるか — あれば2020年の新版です
- 発行年 — 奥付が2020年7〜9月以降なら新版にあたります
- 「合本版」とあれば電子版 — 6巻が1冊にまとまっているものです
- 古書で「文庫 全6巻」とだけあるもの — 1994年からの旧版である可能性があります。エッセイは入っていません
なお本編を読むだけなら旧版でもまったく問題ありません。 古書で安く6巻そろうなら、それも合理的な選択です。
参照元
- 新潮社「深夜特急」公式サイト(刊行年・文庫版全6巻の刊行年)
- 新潮社 — 深夜特急(1〜6)合本版【増補新版】(新版の発行時期・追加エッセイ・電子版に未収録の対談)