『深夜特急』新版と旧版の違い — どの版を買えばいいか
『深夜特急』には単行本・文庫版・増補新版・電子の合本版があり、 どれを買えばいいのか分かりにくくなっています。 結論から言うと、これから読むなら増補新版です。 ただし電子版には収録されていないものがあるので、そこだけ注意してください。
編集:ちんあなご編集部/最終確認:2026年11月1日/作品本文の引用はありません
先に結論
本編の内容は、どの版でも同じです。 違うのはおまけの部分だけなので、まず読みたいだけならどれを買っても問題ありません。
そのうえで選ぶなら、増補新版(2020年発行の新潮文庫)です。 エッセイが追加されているぶん収録量が多く、しかも巻末対談も全巻そろっています。
版の変遷
まず時系列を押さえると、版の関係がすっきりします。 旅そのものから数えると、半世紀にわたって版を重ねている作品です。
| 年 | できごと |
|---|---|
| 1974年 | 旅そのもの。著者26歳 |
| 連載 | 産経新聞に連載される |
| 1986年5月 | 単行本『第一便 黄金宮殿』『第二便 ペルシャの風』刊行 |
| 1992年 | 単行本『第三便 飛光よ、飛光よ』刊行。ここで完結 |
| 1993年 | JTB紀行文学大賞を受賞 |
| 1994年 | 文庫版 全6巻が刊行される |
| 2020年6〜8月 | 新潮文庫の新版(増補新版)が発行される |
つまり「旧版」と呼ばれているのは1994年の文庫版、 「新版」は2020年の増補新版を指します。 単行本3冊が文庫で6巻に組み替えられた経緯は 全6巻の構成で詳しく扱っています。
新潮社が示す発売日と価格
年表の月までは分かっても、書店で奥付を見るときは「何日発売の版か」まで知りたくなります。 新潮社の特設ページに出ている日付を、巻ごとに並べました。
| 版 | 発売日 | 備考 |
|---|---|---|
| 単行本 第一便・第二便 | 1986年5月26日 | 同日に2冊が出ている |
| 単行本 第三便 | 1992年10月 | 日にちは資料で分かれるため、月までにとどめます |
| 新版 第1巻・第2巻 | 2020年6月24日 | 2冊同日 |
| 新版 第3巻・第4巻 | 2020年7月29日 | 2冊同日 |
| 新版 第5巻・第6巻 | 2020年8月28日 | 2冊同日 |
| 電子の合本版【増補新版】 | 2020年9月30日 | 希望小売価格は3,718円と表示されている |
新版は2巻ずつ、約1か月おきに出ています。 同じ特設ページには「シリーズ累計600万部突破」の表示もあります。 価格や部数の表示は変わることがあるため、買う前に各書店の最新の表示で確かめてください。
また、特設ページは『深夜特急』が 「日本冒険小説協会大賞ノンフィクション・評論部門大賞」と「JTB紀行文学大賞」を受けた作品であることも案内しています。 前者の受賞年は、確認できた範囲では分かりませんでした。 書いてあるのは、ここまでです。
(出典:新潮社「深夜特急」特設ページ、2026年11月1日確認。第三便の日付は、新潮社の特設ページと Wikipediaで日にちが異なるため、月だけを書いています。)
巻ごとの定価とページ数
買う前に総額が知りたい人のために、新潮社の特設ページに出ている新版(新潮文庫)の定価を巻ごとに並べました。 すべて税込の表示で、第1巻から第4巻は693円、第5巻と第6巻は737円です。
| 巻 | 副題 | 発売日 | 定価 | 巻末の対談の相手 |
|---|---|---|---|---|
| 第1巻 | 香港・マカオ | 2020年6月24日 | 693円 | 山口文憲 |
| 第2巻 | マレー半島・シンガポール | 2020年6月24日 | 693円 | 高倉健 |
| 第3巻 | インド・ネパール | 2020年7月29日 | 693円 | 此経啓助 |
| 第4巻 | シルクロード | 2020年7月29日 | 693円 | 今福龍太 |
| 第5巻 | トルコ・ギリシャ・地中海 | 2020年8月28日 | 737円 | 高田宏 |
| 第6巻 | 南ヨーロッパ・ロンドン | 2020年8月28日 | 737円 | 井上陽水 |
6冊の定価を足すと4,246円です(この足し算は当サイトの計算で、新潮社の表示ではありません)。 一方、電子の合本版【増補新版】は、希望小売価格が3,718円と表示されています。 どちらも表示は変わることがあるので、買う前に各書店の最新の表示で確かめてください。 第1巻は272ページ(ISBN 978-4-10-123528-8)で、新潮社の書誌情報に載っています。
古い版の定価も、特設ページにあります。単行本は、第一便・第二便がそれぞれ1,650円、第三便が1,760円です。 旅の裏話を書いた『旅する力 ―深夜特急ノート―』は、単行本(2008年11月28日)が1,760円、文庫(2011年4月26日)が781円です。
増補新版で何が増えたのか
新潮社の案内によれば、増補新版では 「あの旅をめぐるエッセイ」が新たに追加されています。
つまり本編そのものは書き換えられていません。 1974年の旅の記録は同じで、そこに後年の書き手が旅を振り返った文章が足されている、 という構造です。
『深夜特急』はもともと、旅から12年たってようやく書かれた本です (沢木耕太郎という書き手)。 時間を置いてから振り返るという行為が、この作品の成り立ちそのものでした。 そこにさらに数十年後のエッセイが加わるわけですから、 「距離を置いて書く」という同じ方法がもう一段重なっていることになります。
電子の合本版に無いもの
電子書籍の合本版は、2020年発行の新版6巻をまとめたものです。 ただし新潮社の案内に明記されているとおり、 第2巻収録の高倉健氏との対談「死に場所を見つける」は、電子版には収録されていません。
これは見落としやすい点です。 巻末対談はこの作品を読む楽しみのひとつで、 なかでも高倉健との一編は最もよく知られています (巻末対談の一覧)。 対談まで読みたいなら、紙の文庫を選んでください。
4つの版を並べて比べる
| 単行本 | 文庫(1994) | 増補新版(2020) | 電子の合本版 | |
|---|---|---|---|---|
| 冊数 | 3冊 | 6巻 | 6巻 | 1冊にまとまる |
| 区切り | 「便」 | 地域ごと | 地域ごと | 区切りなし |
| 本編 | どれも同じ | |||
| 追加エッセイ | — | — | あり | あり |
| 高倉健との対談 | — | 収録 | 収録 | 未収録 |
| 入手のしやすさ | 古書中心 | 古書中心 | 現行 | 現行 |
| 持ち運び | 重い | 6冊は重い | 6冊は重い | 端末1台 |
表にすると分かるとおり、迷う要素は「対談を取るか、軽さを取るか」の一点だけです。 本編で悩む必要はありません。
目的別のおすすめ
| あなたの目的 | 選ぶべき版 | 理由 |
|---|---|---|
| はじめて読む | 増補新版の紙 | 現行で手に入り、エッセイも対談も全部そろう |
| 旅に持っていく | 電子の合本版 | 紙6冊は長旅では重すぎる。対談1本はあきらめる |
| 対談が目当て | 紙の文庫 | 電子には高倉健との対談が入っていない |
| すでに旧版を持っている | 買い直す必要はない | 本編は同じ。追加エッセイのためだけに6巻買い直す価値があるかは好み |
| 1巻だけ試したい | 第1巻 | ここで合わなければ以降も合わない(第1巻の解説) |
見分け方
書店や通販で版を見分けるときは、次を見てください。
- 表紙・書名に「【増補新版】」の表記があるか — あれば2020年の新版です
- 発行年 — 奥付が2020年6月以降なら新版にあたります(新版の発売は1・2巻が6月、3・4巻が7月、5・6巻が8月)
- 「合本版」とあれば電子版 — 6巻が1冊にまとまっているものです
- 古書で「文庫 全6巻」とだけあるもの — 1994年からの旧版である可能性があります。エッセイは入っていません
なお本編を読むだけなら旧版でもまったく問題ありません。 古書で安く6巻そろうなら、それも合理的な選択です。
参照元
- 新潮社 — 深夜特急1 香港・マカオ(書誌情報・あらすじ。2026年11月6日に確認)
- 新潮社「深夜特急」公式サイト(刊行年・文庫版全6巻の刊行年)
- 新潮社 — 深夜特急(1〜6)合本版【増補新版】(新版の発行時期・追加エッセイ・電子版に未収録の対談)