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年表 — 旅と本のあいだの52年

『深夜特急』をめぐる年号は、あちこちのページに散らばっています。 1本に並べると、ばらばらの日付では見えなかったことがひとつ見えてきます。 それはこのページの最後に書きます。

編集:ちんあなご編集部/最終確認:2026年11月1日/作品本文の引用はありません

印は2種類あります。 道=旅と道の側で起きたこと、 本=本と読者の側で起きたこと。

  • 1974道

    旅そのもの。26歳の著者が香港からロンドンまで、1年以上かけてユーラシアを横断する。 当時、デリーから西へ抜ける陸路は普通に使われている道だった(第4巻の解説)。

  • 1970年代末道

    情勢の変化で、作中の道が閉ざされていく。アフガニスタン・イランを含む区間は、 以後、同じようにはたどれなくなった。ヒッピー・トレイルと呼ばれた旅行者の流れもここで途絶える。

    つまり——本が出る前に、道のほうが先に失われた。

  • 1986本

    5月(新潮社の案内では26日)、単行本第一便『黄金宮殿』・第二便『ペルシャの風』が刊行される。旅から12年後 (なぜ12年かかったかは沢木耕太郎という書き手)。物語はデリーで止まったまま、続きはお預けになる。

  • 1989本

    TBSラジオ「ラジオ図書館」で、第一便が4月30日、第二便が7月2日にラジオドラマとして放送される (Wikipediaの記載による)。第三便が出る前で、完結編を待つあいだにも、音の形で作品が届いていた。

  • 1992本

    第三便『飛光よ、飛光よ』刊行。ここで完結。読者は結末を6年待った (第6巻の解説)。

  • 1993本

    JTB紀行文学大賞を受賞する。

  • 1993本

    10月31日、TBSラジオで第三便がラジオドラマとして放送される(Wikipediaの記載による)。

  • 1994本

    新潮文庫版・全6巻が刊行される。地域ごとに分け直されたこの形が、以後の標準になる (全6巻の構成)。

  • 1996–98道

    ドキュメンタリードラマ『劇的紀行 深夜特急』全3部が放送される。 俳優が実際に同じ道筋を旅して撮った、20年後の同じ道の記録でもある(ドラマ版の解説)。

  • 2020本

    6〜8月(6月24日、7月29日、8月28日に2巻ずつ)、新版(全6巻)が発行され、9月30日に電子の合本版【増補新版】が出る。「あの旅をめぐるエッセイ」が追加された (新版と旧版の違い)。旅から46年、書き手はまだこの旅を書き足している。

  • 2008本

    11月28日、『旅する力 ― 深夜特急ノート ―』が新潮社から出る(四六判変型・296ページ)。 新潮社の紹介は、第三便から16年を経た「最終便」と位置づけ、本編に書かれなかった裏話や、デビュー直後のエピソードを収めた 初の長編エッセイとしている。

  • 2023本

    4月3日から、TBSラジオで斎藤工による朗読が始まる。放送は月〜金の23時30分〜23時55分、 新潮社の特設ページは「旅のすべてを半年かけて朗読する耳の旅」と案内している(2026年11月1日確認)。 第一便の刊行から37年を経て、作品は声でも読まれている。

    新潮社の特設ページには、この年の音声の案内がほかにもあります。5月26日から、斎藤工と沢木耕太郎の特別対談がポッドキャスト(Spotify)で配信されました。オーディオブック(Audible版)は、第1巻が6月9日、第2巻が7月14日、第3巻と第4巻が12月27日に出ています(2026年11月6日確認)。第5巻と第6巻の音声版は、この特設ページには載っていません。

  • 2026道

    このサイトの旅が、同じ地図に向かう。通れない区間は中央アジアで置き換え、 残りは作中の順路をたどる(作中の経路との対応)。

この年表が示していること

並べてみると、順番がひとつだけ普通ではありません。 道が失われたのが1970年代末。本が出たのは1986年。

つまり第一便が書店に並んだとき、そこに書かれた道はすでに通れなくなっていました。 最初の読者からいままで、この本はずっと 「もう歩けない道の記録」として読まれてきたことになります。 再現できない旅だと知りながら読む—— この作品の読後感に含まれる独特の切実さは、たぶんここから来ています。

そして「もう歩けない」は全区間ではありません。 どこが歩けて、どこが歩けないのかは 作中のルートと作中の街の現在で 地点ごとに確かめられます。

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